いろいろディープに台湾旅行記〜台湾の人も料理も文化も大好きでたまらない人間の場合〜

台湾の野菜炒めとビール、そして優しい人々‼中国語を使うことで、さらに楽しんできました

台湾ではぜひヒッチハイクを試してほしい~秘境へ向かう旅~

実際問題、ヒッチハイク以外に選択肢はないのだ。
 
どうしても秘境・霧台に行ってみたかった。

前回の旅行では日程が足りず、手前の「三地門」で諦めたことを、ずっと後悔していた。
 
今回行かなければ、一生行けない気がした。

そうなれば、もっと後悔する。

でも、計画のない旅を続けていた僕が、小琉球からフェリーに乗って本島に戻ると、バスはもうなかった。
 
 
バスは、1日3本しかなく午後2時半の便が最終らしかった。

港にたむろしているタクシーに聞くと、霧台まではけっこうな金額だった。
「高い!」というと
「じゃあ途中の屏東までにしたらどうだ?」
という。
 
屏東か。それもありだな。
 
OK。ここは中国じゃない。そんな簡単に値切れない。
 
 

ただ、屏東に行ったところで、宿の心配はないだろうが、バスがあるかはわからなかった。
 
む~。タクシー使う割にはあまりいい案ではない。
 
僕の頭の中には「ヒッチハイク」があった。
 
ヒッチハイク」。いいじゃないか。
 
 
1人旅。男。中国語OK。予定なし。
 
条件は揃っている。
 
よし、試してみよう!!
 
 
 
 
台湾を一人旅するチャンスなど、人生でどれくらいあるかわからない。
 
今やれることをやろうじゃないか。
 
「運ちゃん、ごめん、やっぱりいいわ!!」
 
不意をつかれた運ちゃんだったが、
全く不快そうな様子はなく

「おおそうか」と手をふってくれた。

日本でやったことがある。個性的な人ばかりが拾ってくれて、楽しかった。
 
とりあえずやってみよう。
 
まだ午後3時。時間はある。
 
でも車は少ない。

この先は港。
 
夕刻の道路には、港から戻る車だけだ。
 
うまくいかないかもしれないない。
 
誰も相手にしてくれなかったから、そのときにまた、どうすればいいか考えればいい。

よし、やってみよう!!

どうやって写真に残そうか。
 
車をバックに、自分の突き上げた右指を撮ろうかな。
 
と、考えていたところに、向こうから数台の車が向かってきた。
 
車は多くない。とりあえず写真を撮る前に、このチャンスを逃さずヒッチハイクを初めてしまおう。
 
1台、2台… 
 
バックパックを背負い込んだ旅行者の存在など、気にも留めない。
 
やっぱ時間かかりそうだ。
 
と、思ったそのとき。
 
 
3台目が車がスピードを緩め、やがて横付けされた。

は??
なになに??
どゆこと??

もう??
 
いやまさか、僕のために止まってくれたんじゃなくて、
ちょうど目的地がそこだったってことじゃね?
 
でも、一応行ってみよう!!
 
20mほど先に停められた車のところに向かう。
 
はやる気持ちが抑えられず、自然と走ってしまう。

車のわきまで行くと、一瞬間があってから、窓が開いた。
 
運転手は、コワモテだった。
 
こわっ!!
 
「なんじゃおのれは!?」と怒鳴られるんじゃないかと思い、身構えた。
 
 
 
とりあえずここまで来たのだ。聞いてみなきゃ
 
「乗せてってくるんですか??」
 

でもよく見ると、人懐っこい目をした人だった。

助手席にはハンサムな男性が座っていた。
ワクワクした中学生のような表情で僕を見ている。
 
「どこに行きたいの?」
「霧台に行きたいんです」というと
 
助手席の男性が
「遠すぎる!!」と絶叫する。
 
 
「行けるところまででいんです。途中で降ろしてもらえれば」
 
運転手のコワモテさんとハンサムさんがアイコンタクトをした後

「とりあえず乗る?」と聞いてくれる。
 
ぜひ!!
 
「まず記念に1枚撮らせてください!」とずうずうしく聞いみる!!
 
 
コワモテさんは
「そんな照れくさいよ」と、
ますます人懐っこい表情になって答えてくれる。
 
 
パチリ。

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バックパックを荷台に乗せ、車に乗ろうとすると、
後部座席には、もう一人男性が座っていた。
 
物静かでどこかどっしりとした雰囲気だった。
 
一番若く見えた。どこか堤真一に似ている。
 
とにかく、この男性3人組が僕の救世主となった。
 
「どうもありがとう。みなさんはどこに行くんですか?
霧台までじゃなくて、途中まででいんです。
と尋ねると

「僕らは高雄に戻るんだ。僕ら『東港』で働いてるんだけど、これから高雄の家に帰るんだ」とコワモテさんが教えてくれる。

イケメンさんが引き継ぐ。

「だから霧台とは全く別方向なんだ」
 
マジか。

確かに、ここから高雄に行くには北西、霧台は北東の方角。
 
「いんですか??仕事でお疲れのところなのに!!」
 
「いいのいいの、どうせ暇だし」とコワモテさん。
「でも霧台はちょっと遠いから、途中の屏東まででいい?」
「もちろん!!」

コワモテさんとイケメンさんが陽気に話しかけてくれる。
「仕事は何してるの?結婚してる?台湾は何回目?台湾好き?」

そして台湾の人との定番の会話。「日本に行った話」になる。
 
助手席の男性が「北海道に行ってね。すごく楽しかったよ!」と話してくれる。
 
台湾を旅行していると、
この「日本に行った話」の遭遇率は本当に高い。
 
自分が行っていないとしても「僕の家族が行った」というふうに、知り合いが「日本に行った話」を含めると、ほぼ全員と「日本に行った話」になる。
 
義務教育の一環で行ってんじゃないか?
というぐらい高い気がする。
いや、そんな高くないか笑
 
 
コワモテさんが話し出した。
「以前もヒッチハイクしている人見かけてことがあってね」
「へえ」
「止まってあげたんだ。そしたら女性だった」
「へえ」
「そしたら、俺の顔見たとたん、やっぱりいいです!って逃げやがったの!!マジ失礼じゃね??」と憤慨している。
 
つい笑ってしまった。みんなも笑ってる。
 
助手席のイケメンさんが
「こわい人だと思われたんでしょ!やばい、誘拐される!!って(笑)」
コワモテさん含め、みんな笑う。
 
仲のいいグループだった。
 
「おっさんの俺だってこわいと思ったんだ。そりゃ女性はこわいだろうよ」と思ったけど、もちろん言わなかった。

そしたらイケメンさんがコワモテさんを指差して聞いてくる。
 
「こいつ、怖くなかった?」
 
「少し」と正直に答えると、コワモテさん以外の2人が笑う。
 
「いやでも、いい人だってすぐにわかったよ!」というと、
コワモテさんの表情がほころんだ。
 
空気がやわらかくなってきたところで聞いてみた。

「どうして乗せてくれたの?」
「いやなんかおもしろうじゃん。あなたこそ怖いとかないの?」
「台湾の人は優しいから」とお世辞じゃなくいうと、
みんなまんざらでもない感じ。
 
ヒッチハイク、楽しい。
 

イケメンさんの僕への質問で一番反応が大きかったのが
「台湾で一番好きな料理は何か」だった。

「台湾で一番好きな料理は何?」
 
「たぶん、これ聞いたらみんながっかりするよ」
 
「えー??なになに?」
 
と、僕はもったいぶってから答える。
 

「え~とね、一番好きなのは…
 
 野菜炒め!!そして、生姜ががっぷり入ったスープ!!」
 
「えーー!!家庭料理じゃん!!」
 
みんな、予想以上にがっかりする。
 
ヒッチハイク、楽しいわ。

「もっといろいろあるでしょ!?なんで??」
 
この美食天国にいるんだから、
そう思うのも無理はないだろう。
 
でも、間違いなく、
僕が台湾で一番好きな料理は、野菜炒めなのだ!!
 
だって、めちゃくちゃうまいじゃん!!
 
日本で外食が続くと、大抵は野菜不足に陥る。
 
野菜炒めなんかを頼むと、逆に、野菜が多すぎたりする。
 
日本で「緑の野菜」はちょっとした
「敷居が高い存在」だと思うのは、僕だけだろうか。
 

「『空芯菜』って、日本の飲み屋さんなんかで頼むと、一皿700円くらいするんだよ」

「えー!!高い!!」

「でしょでしょ??外の椅子に腰掛けて、生暖かい風の中で飲む台湾ビール。そんで空芯菜とかをムシャムシャ食べてると、台湾に来たな~ってうれしくなるんだよね」
 
「へー。そういうもんかね~」
 
「そして、たらふく酒を飲んだ後の生姜たっぷりスープ。あの塩加減がたまらない。日本では味噌汁は飲むけど、ああいうスープってあんまり飲む機会がないんだ。
あの、胃に染み渡る感じがたまらないんだよ~」
 
というと、
 
「なるほどね~。言われてみればな~。外国人からみるとそうなるのかね~」
 
と、3人は無理やり納得させられている感じになっていた。
 
でも実際、台湾(中国も)の野菜料理は、うまい。
 
本当に、うまい。
 

こちらからもいろいろ聞いてみると、3人同じ職場なんだそうだ。
 
水揚げられた魚を、船から港に運ぶ仕事。

朝4時から働いているから、まだ明るいこの時間には仕事が終わる。
 
といっても、けっこうな労働時間だ。
 
「じゃあ3人は同僚なんですね」と聞くと
「いや兄弟だよ」という。
 
えっ??兄弟??
 
みんな髪型が違うからよくわかなかったけど、
言われてみれば、みんなどこか似ている。
 
確かに、年齢も若干違ってる。

コワモテさんが聞く。
「どういう順番だと思う?」
 
 
きた!!この手の「年齢系」の質問はちょっと緊張する。
 
 
はずしちゃいけない。不用意に不快な思いをさせたくない。

年齢系の問題は万国共通(?)の難題だ!!
 
コワモテさんが、一番目の兄貴だろう。
 
 
これまでの3人の中でのイニシアチブや外見的に見ても間違いないだろう。
彼が1番目。
 
 
問題は2番目だ。
見た感じ、イケメンさんも堤さんもそんなに変わらない。
 
 
態度的には、堤さんが一番「どっしり」している。
 
でもその「どっしり」が兄弟の上下を表しているわけではないだろう。

その「どっしり」には、
愛情たっぷり受けて育った末っ子特有の甘え上手のようなものも感じる…
 
何言ってんだ俺…
 
 
よ~くと見ると、イケメンさんが年上に見える!!
 
 
よし、ファイナルアンサー!!
 

正解だった。
 
それがなんか向こうさん的にはつまらないようだった。
 
間違って欲しかったようだった。
いのだこれで。
 

年齢問題は古今東西問わず敏感だ。
 

と、そんなやり取りをしている間、イケメンさんがスマホのグーグルマップで検索してくれているようだった。
 
「屏東から霧台まで1時間みたい。そしたら霧台まで行っちゃうか」とコワモテ兄貴に相談する。コワモテ兄貴も同意する。

「よし、行くか!!俺たちも霧台は初めてなんだよ!!」
 
マジで??

いいの?

やったーー!!
ありがとう!!

なんてことだ。
 
試しにやってみたヒッチハイク
 
なんと3台目で止まってくれて、
しかも自分たちの目的地と全く別方向の、僕の目的地まで行ってくれるという。
 
 
台湾、すごい国だ。
 
 
バス代おごってくれたり、落とした財布戻ってきたり、
ウミガメめちゃくちゃ見れたり、
ヒッチハイクしたらすぐ拾ってくれて目的地まで送り届けてくれたり…
 
台湾人、どんだけ親切なんだ…
 
 
車に乗っている間じゅう、いろんな話をした。
 
職場がみんな同じなのは、おじさんが経営している会社だから。
 
コワモテ兄貴は結婚していて、奥さんが今第一子を妊娠していること、だから禁煙を考えていること、弟2人は野球をやっていること、2番目のイケメンさんはキャッチャーで、末っ子の堤さんはピッチャー。
 
堤さんが写真を見せてくれた。格好いい。

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堤さん
 
 
僕が山形に住んでいて仙台の近くだと説明すると、
イケメンさんは楽天の話をした。

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イケメンさんの写真
 
めちゃくちゃ詳しかった。
 
もう野球への興味を失っている僕には「嶋選手」しかわからず、
その話で盛り上がれないのが残念だった。
 

そうこうしているうちに、「三地門」を通りかかる。
 
ガラリと雰囲気が変わる。漢民族でない香りがプンプンする。
 
いい。やっぱりこの雰囲気、最高だ。

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あっ、セブンイレブンが出来てる。
でも、セブンも「三地門」風。いい感じだ。

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10年前、僕はここまで来た。あのときも台湾一人旅で、台湾を一周した。
 
一番心に残ったのが、この「三地門」だった。
 
違う世界に入り込んだような感覚だった。
 
それなのに「三地門」の人たちは「霧台はもっとすごい」と口を揃えた。
 
でも、「バスはもうないし、霧台に入るための『入山許可証』も発行が間に合わない」とやはり口を揃えた。
 
でもこの10年で、入山許可証の申請は簡素化されたらしい。当日その場で申請すればいいらしい。
 
ほどなくして、許可申請の場所に着いた。

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手続きも5分ほどで終了。
 

さあ、いざ。いざ霧台へ!!
10年越しの念願の霧台へ!!
 

車はぐんぐんと山道を登る。登っても登っても山道。
霧深くなってくる。
さすがは霧台。
途中、撮影ポイントがあると、お願いしていないのに車を停めてくれた。
「撮影、好きなんでしょ?」
「ありがとう」
 

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なんていい人たちなんだ。
 
僕が撮っている間、彼らはタバコ休憩。

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3人

堤さんは吸わない。
 
タバコより野球を選んだのだろう。
 
再度車に乗り込んで、イケメンさんが聞いた
「ファインダーを覗いた世界が好き?」
「好き。写真はやる?」
「やらないけどさ」
 
こんな会話の時、お互いが外国人であることが不思議になったりする。
 
写真はやらないけど、
一眼レフカメラを持っている人間がどんなタイプなのかをわかっている。
 
人間の分類の仕方を共有している。

同じ世界に生きている、と感じる。
 
彼らは、結局宿の手前まで送ってくれた。
 
車から降りると、霧台は空気そのものが違って気がした。

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独特の世界が広がっていた。
 
3兄弟の存在が、何か外部からやってきた異質な存在に見える。
 
3兄弟は、車が入るのにはちょっと狭い坂を指差して
「ここを登っていくと泊まる宿があるよ」と教えてくれた。

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「本当にありがとう」

 

こんなときのために、僕は日本のタバコを持ってきていた。
 
渡すと2人はとても喜んでくれた。
 
心の中では「妊娠してる奥さんごめんね。旦那さんの禁煙はさらに延期になります」と懺悔した。
最後に記念にパチリ。

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本当にありがとうね。日本に来るときは教えてね。
 
ヒッチハイク、楽しい。一人旅には最高だ。
 
この調子で戻るときもヒッチハイクしようかな、とこの時すでに考えていた。
 
そしてまた、予想以上のいい思い出ができることになった。