ミスチルコンサート旅@台北・3日目(公演2日目)〜超満足感に浸ったあとはスッポン食べるディープ台北旅〜
前段記事:
公演そのものよりも、そのチケットを買うまでが印象深かったです。
夜は、「華西街観光夜市」ですっぽん料理でした。
ミスチルコンサートの感動覚めやらぬ朝。
できたてのおいしい朝食を頬張りながら
「やはり今日もコンサート行きたいな」と考える。
@スリーピードラゴンホステル
参考:
とりあえず、朝食はうまい。
幸せ。
コンサートのチケットが買えるのかどうか、午後に会場に行ってみることにしよう。
そしたら、チェックアウトまでは宿でゆっくりしていよう。
明るいロビーで、名作「流」を読む。
有料のコーヒーの1杯分だけ料金を払う。
台北を舞台にした直木賞作品で、めちゃくちゃ面白い。
現在の50代くらいの台湾人男性が主人公。
当時の台湾社会が肌で感じられるのがまず面白い。
国民党と大陸の共産党との確執も、現地目線でわかってとても新鮮(名著『台湾海峡一九四九』を彷彿とさせるが)。
比喩がいちいち大げさなんだけど、その方向性が針の穴を通したみたいにぴったりくるから、全然違和感なく読めて、むしろ独特の世界観に引き込まれていく。
そして何より、等身大の主人公がとても魅力的。
ページをめくる手が止まらない。
宿の主人に頼む。
「チェックアウトは先に済ませるから、ロビーにもうちょっと居座らせて」
「どうぞどうぞ。ごゆっくり。当日券を買うにはまだ早いものね」
12時を過ぎて、バスでコンサートホールへ。
すでにスタッフがいる。
「当日券ありますか?」
「ええ、あります。1時半に発売場所を発表し、2時から販売開始です」
「枚数は?」
「それについては公表していません」
必要以上の秘密は、人の焦燥感を煽る。
僕は、必要以上の秘密は必要以上の不仲を招くことを、山形県警の取材を通して学んでいる。
犯人に気づかれずに捜査を進めるには、秘密裏に動くことは必須だ。でも、秘密にしなくてもよいことを秘密にするのは、ネガティブな結果を生むだけだ。
OK。
彼らは必要以上の秘密を選んだ。
受け入れるしかない。
こういうときはシンプルに考えるしかない。
僕がやれることは1時半の発表を待つだけ。
いや、ちょっと待て。
今回は最低限しか両替していない。
お金足んない。
チケットはクレカで買えるのかな…
窓口の人に聞いてみると
「その公演は、現金だけですね…」
マジか。
もう銀行もやっていない。
キャッシングしなきゃ。
「この辺にATMはありますか」
「アリーナ内のセブンイレブンにありますよ」
お~。さすが台湾。便利だぜ。
さっそく向かう。
しかし、いざATMの前に立ってみると、
…
…
キャッシングがどれかわからん!!
日本のクレカは使えないってことか??
いいやもう。
銀行を探そう。
おっ!
道路の向こう側に銀行あんじゃん!!
よし!!
ATMは誰もいない。
慣れない台湾中国語(繁体字)の画面を見ながら操作をする。
慣れないけど、なんとかわかる。
最後のボタン。
よし!!
画面に出てきたのは…
「取引不成功」
???
2度やっても同じ結果。
なぜだ???
諦めて違う銀行を探す。
中心部だけあって、歩いているともう1軒見つけた。
よし!!ここで決着だ!!
今度は
「1000元札のみにしますか?100元札もいりますか?」というボタンも出てきた。
これならいけそうだ!!
と思ったら…
やっぱり
「取引不成功」
マジか…
まさかの「台湾ドルをキャッシングできない」という状況か?
どういうことだ??
なぜキャッシングできない??
考えられるのは、外貨両替を扱える銀行と、不可の銀行があるということか。
「台湾銀行」じゃないとダメだってことか?
むむむ。
1時半までもう1時間しかない。
いや、ここは台北の中心部だ。
近くにきっと「台湾銀行」があるはずだ!!
日差しを避けながら、しばらく歩くとまた新たな銀行を見つける。
いろんな銀行がしのぎを削っているのか?
一応入ってみると、「外貨」の文字。
よし!!ここだ!!
やはり無人のATMで操作する。
台湾中国語(繁体字)の画面も、もう慣れたもんだぜ!!
そして…
やったぜ!!
台湾ドルがドバッと出てきた!!
5000元≒2万円を、高利でゲットだ!!
俺も、
失業者&高利キャッシング、の仲間入りだぜ!!
販売場所が発表される1時半まで残り40分。
1時半から販売開始の2時まで並び、さらに購入まで並ぶことを考えれば、今のうちに昼食を摂っておきたい。
でないと、マジばてそう。
旧正月直前とあってか、軒並み店が閉まっている。
なんとか見つけて入る。
バイキング形式の店。
店員に
「肉はどれ?」と聞くと、渋い顔をされる。
この店は「素食」の店だった。
「素食」とは、いわゆる「精進料理」。
「素食」店には2度と入るまいと決めていたのに…
これで105元≒420円。
「湯葉の唐揚げ?」は普通に鳥唐と区別つかない感じでうまかった。
台湾のいいところは、野菜不足にはならないこと。
一方台湾人は、日本旅行で困ったことに「野菜不足」を挙げる。
腹ごしらえしたところで、アリーナに向かうと、すでに人だかりだった。
日本人と思しき人たちがすでに整列していた。
台湾人スタッフに
「あれもう並んでるの?」と聞くと
「私たちはまだ並ぶ場所を発表していません」とそっけない。
とりあえず日本人ファンが勝手に並んでいる、ということらしい。
並んでいるのは、前日と同じ場所「5番入り口」だ。
でも、さっき聞いたときスタッフが
「きょうは『6番入り口』じゃないかしら。私たちもよく知らないのよ」と言っていたのが気にかかる。
それでも僕は、とりあえず整列の後ろに加わった。
「並ぶ位置は本当にここでいいのか?」「並ぶこと自体無駄なのではないのか?」という不安と猜疑心にかられながら。
ひとり旅なので「ここでいいのかね?」と会話する人もいないせいか、
「本当にここでいいのか?」という疑問だけがどんどん膨らんでいく。
考えているうちに「やみくもに並んでいる(であろう)日本人ではなく、自分が聞いていことを信じよう」と思い直した。
日本人の集団から離れて「6番入り口」に移ろう。
すると、向こうにいる日本人ファンが、大きな丸ポーズを作ってこちらに歩み寄ってくる。
「5番入り口」で並んでいる友人に
「並ぶ場所はそこでいい」という合図を送っているらしかった。
その女性の表情は、自身に満ちていた。
絶対の自信から生まれる、朗らかさがあった。
彼女の表情には、強い説得力があった。
そこでまた僕は思い直して、「5番入り口」にとどまることにした。
次の瞬間!!
「6番入り口」付近で歓声が上がる!!
しまった!!
やはり「6番入り口」だったか!!
そう気付くや否や、5番の群衆が一斉に6番に走り出す。
僕もその流れに遅れてなるまいとダッシュした!!
「最初の3歩は内股で。目線は数メートル先で走ると速い」という高校時代に気をつけていたことを思い出しながら、内股で数メートル先を見てダッシュする!!
僕が30メートルほどダッシュすると、すでに行列ができていた。
前の人にぶつからないように急停止したつもりだったが、前の人を押すようにぶつかってしまう。
今度は僕が、後ろの人からドンと押される。
更に後ろの人がもっと後ろに人に押されて…
僕はずっと押され続け、呼吸ができなくなった。
もはや半狂乱状態だ。
たまらず腕を胸の前に持ってきて、前の人と自分の胸とに隙間を確保する。
ようやく押される状態が収まったが、人のかたまりは列ではなく、半円に近い状態になっている。
台湾スタッフが「2列に並んで!!」と中国語と英語で怒鳴る。
しかし、皆必死だ。
誰も自分から譲ろうとしない。
1列に2人どころか、5~6人がひしめきあっている状態だ。
僕も自分から後ろに下がる、などということはしない。
そんなことをしたら、巻き添えを食らう後ろの人からもどやされかねない。
台湾人スタッフも面食らったのだろう。
繰り返し「2列に並んで!!」を繰り返している。
すると、先頭にいた台湾人ボス的男性スタッフが少しずつ前に進み出した。
前に進むことできちんとした列を作ろう、ということらしい。
ボス男性が何やら叫びながら、列は迂回しながらゆっくり進む。
しばらしくして、列が徐々に長くなり、僕もようやく楽に呼吸できる状態になった。
半狂乱状態からようやく秩序を取り戻し始めた、まさにその時だった。
女性が飛び猿のような、鮮やかな身のこなしを見せた!!
中腰のまま走り、迂回の隙に何人か抜かす!!
しかし!!
台湾人ボスはそのズルを見逃さなかった。
「きちんと並べ!!」
容赦ない怒号が響き渡る。
ボスは飛び猿女性の腕をがっちり掴み、乱暴に後ろに戻した。
日本では暴行罪になりかねないその行為も、この半狂乱状態の中では、「とても頼もしい行動」に映った。
きっとみんなもそう思ったはずだ。
そんな押し合いへしあいしている様子を、列に入っていない日本人女性が、面白がってスマホで撮影していた。
僕の醜態も、そのカメラに収められているはずだった。
撮られる、というのは嫌な気分だった。
そのせいか、撮っている女性の表情はとても嫌ななものに感じた。
その間にも、ボス的スタッフが、列を2人にしていく。
3~4人が譲らないところに出くわすと、腕を掴んで強引に2人にしていった。
と、今度は僕の目の前で怒号が飛ぶ!!
どうも日本人が2列になる混乱の中で我先に前に並ぼうとして台湾人女性を突き飛ばした形になり、その夫が激怒しているらしかった。
「おい、お前だ!!おい!!」
夫の怒りは収まらない。
「礼儀正しいのが日本人じゃないのか!!日本人がそんなのでいいのか!!」
その日本人は、自分に対して言われていることはわかっているようだが、何とか無視して逃げ切ろうとしているようだった。
その態度がまた、夫の怒りをあおっていた。
見かねた近くの台湾人が、日本人に対して優しく日本語で解説する。
日本語で話しかけられてはさすがに無視しきれない日本人は、妻に対して謝るような仕草を見せた。
怒鳴られ続けることに恐怖を感じ、戸惑っているようでもあった。
30代後半くらいの男性で、まっとうな社会人に見えたが、やけに卑しい目をしていた。
謝るその仕草には、誠意は全く感じられなかった。
「これでいいだろ?」という傲慢さが透けて見えた。
それでも、間に入った台湾人が、激怒夫に何か話している。
おそらく
「ほら、彼も謝っているし、もう許してあげなよ」とでも言ってる感じだ。
しかし興奮収まらない夫は相変わらず大声で話し続ける。
「あいつは日本人なのか?日本人ってこんななのか?誠実なんじゃなかったのか??聞いているのと違うぞ!!」
間に入った台湾人が少しずつなだめて、ようやく夫は落ち着いた。
しかし、細かいイザコザは僕の目の前でも発生した。
僕の前に並んでいた30代後半の女性は、友人と離れ離れになったようだった。
ボスが見ていないすきに、友人に手招きする。
どこからともなく「ズルはやめて!!」と懇願する声が飛ぶ。
僕も
「え~勘弁してよ」と心の声が漏れてしまった。
すると手招きした女性が
「1人2枚まで買えるんだからいいでしょ!!」と僕をにらめつけた(実際は1人1枚)。
迷いのない、恐ろしい表情だった。
顔の作りはとてもきれいな人だったけど、とても醜い、と感じた。
その人の一番嫌な表情を見せられた気がした。
そしてその友人は、たくましくも数十人をごぼう抜きし、僕の前に滑り込んできた。
一方、僕の隣は台湾人女性で、彼女もやはり整列の混乱で友人と離れ離れになっていた。
でも、台湾人女性は、列を抜かすことなく、離れ離れを受け入れていた。
台湾人は日本人を美化しすぎている。
台湾人は「日本人はとても礼儀正しく親切」だと口を揃える。
でも僕は、台湾人の方がずっと礼儀正しく、親切だ、と思う。
だから、台湾旅行はやけに楽しい。
列が整い、半狂乱状態が落ち着いた。
すると、副ボス的スタッフが、1人1人の手に番号を記入していった。
僕の手に「89」が記された。
用意された当日券は200枚で、それ以降に並んでいる人は無残にも「解散」となった。
そこから購入まで、更に1時間ほどかかった。
僕の前は、日本人男性で「熟練ファン」らしかった。
その前の2人組の女性に声をかけ、
自分と仲良くするといかに得になるかを得意げに話していた。
女性2人組は「すご~い!!」を連発させていた。
僕の後ろは、日本人母娘だった。
2人の会話が聞こえてくる。
「殺伐として怖い…」
「ご飯食べてないけど、もうお腹空くのも忘れる雰囲気だわ」
「これが日本だったら、運営側に批判殺到だよ…」
日本人は管理されるのに慣れきっている。
日本通の台湾人だが、おそらくそのことを知らない。
日本人は自分の意思を持つのが苦手だ。
意思で埋めるはずの部分を、必死に他の何かで埋めようとしている。
僕もこの雰囲気にのまれ、すっかり疲れてしまった。
購入する頃にはもう頭がぼんやりしすぎて、カメラを肩にかかていたのをすっかり忘れてしまった。
カメラを床に落としてしまい、レンズが壊れ、ピントを合わせることができなくなった。
苦労の末、ようやく手にいれたチケット。
スマホカメラで撮影。
位置は、「2階の真横」とでもいうべきか。
1枚2万円近くする。
こんなもんだろうと思っていたが、日本のコンサートより2倍くらいするようだった。
宿でチェックインした後、再びアリーナ付近に向かう。
ここで腹ごしらえしよう。
「漢方羊肉湯」にした。
薬膳スープが、心労で疲れた胃に染み渡る。
さあ、アリーナへ。
2日目は、1日目と違い、順調に入場が済んだようだ。
僕の席は、1番端だった。
始まる直前、裏方の方から大声で歌っている声が聞こえる。
高音部分を何度も歌い直している。
間違いなく桜井さん本人の生声だ。
直前リハーサルか!!
すごい…
こんなのも聞こえて来るなんて。
そして、複数人が「さあいこう!!」「よっしゃ!!」と声を合わせた。
エンジンを組んでいる姿が透けて見えるようだった。
きてよかった…
そして、2日目のコンサートが始まった。
桜井さんの服装がちょっと違う程度で、1日目とほぼ全て同じだった。
『海にて、心は裸になりたがる』では「可愛げのないあなたにも」の瞬間、桜井さんがベースの彼を指差すタイミングがちょっと違うくらいではないか?というぐらい同じだった。
きのうの正面立ち見席と比べ、音響が弱かった。
僕らの席を向いたスピーカーはなかった。
そのせいか、大声で歌うと自分の声が聞こえてきた。
実際、前の席の男性が僕を振り返るので、少し遠慮してあげた。
チケットを買うときに、僕の前に並んでいた「熟練ファン」の男性だった。
「熟練ファン」であることをネタにナンパを仕掛ける男性が、なぜ当日券で入場しているのかは謎のままだった。
2日目ともなると1日目ほどの感動はなかったにせよ、
最高の時間であることに違いはなかった。
人生にこんなこと、2度とないかも知れない。
扶養家族あり、住宅ローンありの無職37歳。
それがどうした。悔いなし。
人生の節目にふさわしい2日間だった。
台湾公演があったらまた来よう。
終了後は、地下鉄駅に入るのも困難なほどの混雑。
僕はとりえあず目の前のバスに飛び乗った。
乗車後に、隣の人に
「どこ行きのバスですか?」と質問すると
「???。あなたはどこ行きたいの??」と逆質問された。
質問を繰り返してバスを乗り継ぎ「華西街観光夜市」へ。
参考:Google マップ
(当時会社を辞めたばかりで節約してバスで行きましたが
タクシーでいってもそんな遠くないです)
ディープな場所らしい。
目的地、すっぽん料理店。
300元≒1200円でセット料理。
他にも、蛇料理、ワニ料理を出すようだが、やはり、すっぽん。
炭水化物を食べないと眠れないのでもう少し食べたい。
お店の人に
「海鮮と野菜を食べたい」と注文したら
「じゃあ海鮮麺にしたら」とこれが出てきた。
100元≒400円。
お腹も満たされ宿に戻る。
すると、途中、わかりやすい女性がたくさん立っていた。
なるほど。
ディープと言われる所以は、こうしたところにもあるのか。
さて、明日は何をしよう。